Kunimori Motors Co., Ltd.
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幌張りにうってつけの日

秋晴れの蓼科でTR3A幌張り

Fitting the Soft Top on a Triumph TR3A under the Autumn Sun of Tateshina

幌を張るのは、春か秋の暖かい日が最適と言われています。
夏に張ると、気温が高く生地が柔らかいため、かなり強く張らないと冬にはダルんでしまいます。
逆に冬は幌が硬く縮んでしまい、相当温めなければ綺麗に張れません。

It is often said that the best time to fit a soft top is during a mild spring or autumn day.
If fitted in midsummer, the material stretches too easily and will sag loosely once the cold season arrives.
In winter, the fabric becomes stiff and must be thoroughly warmed before it can be stretched neatly into place.

ここ蓼科では、秋の日中の限られた暖かい時間が勝負です。
幌を日向に置いてしっかり温め、柔らかくなったところで午後に一気に張り込みます。
少しコツのいるTR3Aの幌ですが、何度も経験しているので迷うことはありません。

Here in Tateshina, the window of warm daytime sunlight is short during autumn.
We place the hood in the sun to soften it thoroughly, then fit it in one go during the warmer afternoon.
The TR3A top requires a bit of technique, but after many installations, the process feels natural.

今回もテンションやスナップの位置がぴたりと決まり、美しく張り上がりました。
幌のラインもクラシック・ブリティッシュ・ロードスターらしい、張りのある姿に。
しばらくは張りっぱなしにして、生地をしっかり馴染ませていきます。

Once again, the tension and snap alignment came together perfectly,
resulting in a taut and elegant profile—just as a proper British roadster should have.
We’ll keep it fitted for a while to allow the material to settle naturally.

AUSTIN HEALEY 100/4 点火系アップデート

クラシックカーにおける点火系は、信頼性と走行性能を大きく左右する重要な要素です。今回整備したのは Austin Healey 100/4 BN2。ラリーを戦うためのメンテナンスの一環として、ディストリビューターの交換を行いました。

しかし単純な「付け替え」ではなく、旋盤加工を伴う少し特殊な作業です。

長年使用されたオリジナルのディストリビューターはシャフトに大きなガタがあり、すでにポイントレス化されていたものの正確な点火は望めません。ラリーのように長時間・過酷な環境での走行を考えると、このままでは不安要素が残ります。




上が新しいユニット、下がオリジナル。外見は似ていますが、寸法やシャフト長さが異なり、そのままではBN2のエンジンに適合しません。



まずは旧ディストリビューターから採寸し、新しいユニットに合わせて加工を行います。




過去にピンが飛び出だした経験があるので、溝を作り飛び出し防止のスプリングが入るように加工


エンジンへ無事装着。デジタル制御による正確な点火タイミングが得られるようになり、プラグのカブリは皆無。高回転域でも安定した火花供給が保証され、ラリーイベントにふさわしい仕様となりました。


クラシックカーの点火系は、一見問題なくても内部のガタや精度不足が隠れています。今回導入した 123IGNITION のようなデジタル点火は、MSDと並びクラシックラリーに必須のアップデート。正確な点火はエンジンの安定性を大きく高め、安心して走り込むための重要な要素です。

ブレーキカップ考察

ラリーイベント前整備の一場面。
ブレーキカップを並べて比較すると、違いは明確だ。

左のイギリス製はオリジナルらしさがあり、クラシックカーの雰囲気を重視するには悪くない。
中央のアフターマーケット製は互換性をうたっているが、寸法精度や材質の安定性にばらつきがあり、ピストンとのクリアランスや耐久性に不安を残す。
右の国産 Seiken はリップ高さ・仕上げ精度・硬度が安定しており、EPDM ゴムの耐薬品性も確実。プロの現場で安心して選べる品質だ。

クラシックラリーの現場では、信頼できるブレーキシールこそが「完走」を左右する。
部品一つの選択が、イベントを戦い抜くかどうかを決定づける。

リフト・ザ・ドットとテナックス

クラシックカーの幌やトノーカバーを固定する際に欠かせない金具には、実はいくつか種類があります。その代表的なものが「Lift-the-Dot(リフト・ザ・ドット)」と「Tenax(テナックス)」です。



写真にある四角い形の金具がリフト・ザ・ドット。名の通り「DOT」と刻印され、片側から持ち上げるように外す仕組みになっています。強い保持力がありながら、決まった方向に持ち上げることで外せるため、走行中の振動で外れる心配が少ないのが特徴です。

一方で丸い形をしたのがテナックス。こちらは頭を押し込んで固定し、引き上げて外すタイプ。比較的ワンタッチで扱いやすく、幌やカバーの着脱を頻繁に行う場面ではとても便利です。イギリス車を中心に、クラシックカーの幌・トノーカバー・ドアパネル固定などで長年使われ続けています。



どちらの金具も「Made in England」と刻まれている通り、今なお英国で生産され続けるクラシックなパーツ。形や構造に個性があり、車種や年代によって使い分けられてきました。細部の金具ひとつにも歴史と機能美が宿っているのが、クラシックカーの面白さです。

整備の神が舞い降りて

春のラリーイベントを終えたトライアンフTR3
そのイベント帰宅中に運転席足元に嫌な甘い匂いが漂い、ヒーターホースから冷却水が滲み出しているとオーナーから緊急入電

その場でヒーターユニットに冷却水がまわらない様にバイパスさせ無事にオーナー様はご帰宅

TR2から3Bまでのヒーターユニットは、センターメーターパネルの真裏に密着するように取り付けられています。しかも配管は横ではなく真上に伸びるという設計。これがまた整備泣かせで、メーターパネルを外さずに手を入れようとすれば、手の関節を外すか、整備の神が舞い降りる奇跡でもなければ到底アクセスできない位置です。



奇跡的に整備の神が舞い降りて古いホースを外してみると、やはりというべきかゴムは硬化し、表面には無数のクラックが走っていました。これではいつ大きく裂けても不思議ではありません。イベント本番でトラブルにならなかったのは幸運でした。

そこでヒーターホースは全て新品に交換。加えて古いホースバンドも交換、新しいホースに交換すると安心感が違いますよね。